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航葵1 何で気になんだろう?JPG.

書いていたのが消えた……。
もう一度挑戦できるだろうか?


昼休みにオレは慌てて廊下を走っていた。じゃんけんで負けたオレは涼の分も含めて、昼飯のパンを買いに購買に急いでいた。4時限目が終わる直前に教室を抜け出るツワモノもいる中、運悪く今日の授業が長引いてしまったのだ。
すでに購買の辺りはざわついているのが遠くからもわかる。
この角を曲がれば購買という所で、オレは人と鉢合わせしてしまった。
「いてっ!」
「すんません!」
相手の厚い胸板にしっかりと顔面をぶつけたオレが振り仰ぎながら謝れば。
「あ~お~い~! あぶねーじゃねーか!!」
と相手であった、野球部で知らぬものがいないスラッガーである高橋航先輩だった。
「す、すんませんって。急いでいたから」
パンが無くなるのが気が気でないオレは、航先輩の後ろを気にしていたけど、大きくてがっしりした手がオレの肩を拘束したままだった。
「なんだ、パン買いかよ」
「はい、涼の分もなんで」
「さてはおまえもじゃんけんで負けた口か?」
俺も柴に負けて、あいつの分も買出しなんだ。
持ち上げた手には確かに二つのビニル袋があり、パンがつまっていた。
「しょうがねーなぁ。金」
「え?」
差し出された皮が厚くなって胼胝がいっぱいの掌と、先輩の少し大きくて垂れた瞳を見比べる。
「なんでもいいんだろう? 腹が膨れれば」
もう一度掌を目の前に出されて、その上にポケットから取り出した千円札を乗っけると、
「買って来てやる。これもってろ」
ビニル袋を持たされると、航先輩は人を掻き分けて、その大きな後姿を人込みに紛れ込ませていた。
すぐにパンを買って戻ってきた先輩に、「あ、ありがとう、ございます」と頭を下げた。
「ばっか。葵じゃ人込みに飲まれて、いつまでも買えないだろうって優しい先輩の心遣いだよ」
そう言いながらニカッと笑うと、空いた掌でオレの頭を撫でた。
「ほれ」と差し出された膨れたビニル袋を受け取る。持っていた袋を返すと、
「釣りはその中な」
「はい」
覗き込むと。パン以外にブリックパックが入っていた。
「これ」
「……おごってやる」
振り返ると。
「イチゴミルク、好きだろ?」
「はい。ありがとうございます」
「涼はコーヒーミルクな」
「好み、知ってるんすね」
ちょっと驚いた。柴先輩ならまだしも、がさつそうな航先輩がオレ達双子の好みの違いを知ってるなんて。
「そりゃ、まぁ」
少し困ったような、恥ずかしそうな顔をするから。
なんかそぐわないなぁと思ってじっと見詰めていると。
「涼が待ってるだろ? つうか、一緒に食おう。屋上こいや」ともう一度頭をつかまれた。
「は、はい。じゃあ携帯で呼ぶっす」
「そだな。一緒行こう」
「っす」
携帯をかけながら、まだ頭の上に置かれた手に導かれるように歩き出しながら。

なんか変なの。

航先輩に対して。自分の気持ちのもやもやが。
嬉しいような楽しいような。困ったようなそれに。

ちょっと複雑だなぁと思った午後の始まり。


2008.11.15
   しゅりんか

あとがき
航葵。たぶん柴涼がすんなりなら、この二人はなかなかまとまらないと思ったり。

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