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いつもお越しいただき、ありがとうございます。
きっと亡国の続きを待ってる方のが多いと思いつつ、こっち書いちゃった私を許してください。
私事でストレスがちょいたまってきて、つい、軽い話に逃げていますね。ははは。
亡国は書いてあるけど、ちょっと見直しを繰り返してます。
さすがに自分でも納得できないと出したくないですしね。
もうちっとだけ、待ってあげてくださいませ。
それではペガサス慎吾いってみようか。
準太は次回頑張ってもらおうかな(をい)。
拍手ありがとうです~~~☆
『 Azul para siempre 』
Act.2
「ねぇ慎吾さん」
「……なんだ、準太」
やっと頭痛から解放されて、お茶のペットボトルを珍しそうに飲んでいた慎吾が返した。
「さっきから感じるんだけど」
「……処女、けっこう少ないな」
「そうだね。嘆かわしいね~……って、違う!」
準太は持っていたペットボトルを握り潰した。
飛び散るコーラの飛沫を慎吾は風のバリアで防ぐ。
準太の身体にも張って上げた。
ブシュ~~~!!
「う、手がベトベト」
唯一バリアが張られなかったボトルを握った手だけ、滝のように流れ出たコーラによって濡れそぼっていた。
準太が洗おうと水を呼び出そうとした時、いきなり側の天体観測用のドームから、のそりと人が出てきた。
「おや? 巷で噂の転校生じゃん」
「ども」
「ちわ」
「よっす。俺三年四組の山ノ井圭輔、よろしく~」
おたくらの名前は知ってるからいいよ、俺のことはヤマチャンって呼んでねと、勝手に話を仕切られた。
準太が軽くムッとしながら手を洗ってくると下に降りていった。残された慎吾は茶を口にしながら、また陸上部の練習を眺める。それを脇から眺めながら、ヤマチャンが微笑んだ。
「陸上好きなの?さっきから見ていたよね」
「んー。走るのは大好きだけど」
空をと、慎吾は心の中で付け加える。
「一つ良いことを教えて上げるよ」
ヤマチャンがおもむろに言った。
「んー?」
「欠片の影響で、目覚めた怪物どもがいるんだよね」
慎吾が目を見開いて隣をみる。
どう見たって普通の人間に見えた。
「欠片……」
「持ってるよー」
チャラと左腕を見せると、そこに紫色の欠片がブレスレットになって着いていた。
「な! えっ!?」
慎吾が混乱して言葉が続かない。
ヤマチャンは一瞬眉根を寄せたが、ああと納得すると両手を打った。
「アトラスの奴、なぁんにも話してないんだぁ」
「アトラス? 和己の事か?」
「今そんな名前使ってるの。あいつ昔から日本贔屓だったしなぁ」
一人納得するヤマチャンに、言葉が続かない慎吾。
「欠片はちゃんと、定められた螺旋の元に集まってきているんだ」
「螺旋……」
「全てのものが螺旋を描いているって知ってるだろ? 宇宙も太陽系も、小さいところでは粒子とかさ」
「はぁ」
「まぁ、それで要はさ」
「……ところで、ヤマチャンは誰なのさ」
「……解らないの?」
「うん(きっぱり)」
慎吾が思いっきり頷くと、ヤマチャンがよよよと泣き崩れる。ぎょっとする慎吾。
「ひどいわぁぁ!! あんなに仲良くしていたのにぃぃぃ!!!」
ヤマチャンがハンカチを取り出して歯で食い縛ってみる。
えっと。
慎吾が動きを止めた。どうしていいか、さっぱりわかんね。
「まぁ、しょうがないや」
さらっと涙を拭いて立ち上がって埃を叩く様子に、慎吾は眩暈を感じた。
そして、そんな経験を確かに前にもしていたような気がした。
「俺達って知り合いなんだろ?」
「うん(きっぱり)」
「えっと、それって人間としてのヤマチャンと?」
チッチッチッ!
ヤマチャンが人差し指を横に振った。
「今の俺は特別でね。完全なこれの生まれ変わり的存在」
そういうと腕の欠片をチャラリと振った。
「生まれ変わり?」
「そう。普通人間になるのはご法度だけどさぁ」
手摺に寄りかかってにっこりとヤマチャンが笑う。
でも。
今回は特別なんだよねぇ。
にやり。
「……なんかその笑顔見ていたら、逃げたい気分になってきた」
「やだなぁ。こんなプリティーな顔見て、何言っちゃってんだろ?」
ヤマチャンはバンバンと慎吾の背中を叩いた。
「ところで。俺が誰か思い出してないんだろ?」
すごく真面目に言うから。慎吾も自然と真面目に考え込む。
でも、やっぱり思い出せない。
喉元まで出掛かっている何かが、まだ外に出してはいけないと言わんばかりに、突っかかったまんまだ。
ふぅとヤマチャンは軽くため息を付くと、向きを変えてグランドを見下ろす。
「この学校が今回の中心点なんだ。だから欠片が集まった」
「何の中心だって?」
「それは、おいおい解る」
「……ただ欠片を集めて帰るって話じゃなかったのかよ?」
和己、帰ったら焼きいれる。
慎吾は心の中で誓った。
「面倒事に巻き込まれたって思ってるようだけど」
げ、心読まれた?
「おまえ自身も関係者だから、地上に下ろされたんだ」
「は?」
ヤマチャンが指をさす。
慎吾もそっちを見る。
そろそろ夕闇も濃くなって、部活動も終わりなのだろう。
みんな用具を片付けたり、ダウンを始めている。
だが、迅はまだグランドを駆けていた。
あいつ、本当に昔から駆けるの大好きだったよな……。
!!!
「な!」
「中途半端に記憶を取り戻し始めてるんだ」
ヤマチャンがククッと笑った。
「問題はこれからだ」
「?」
「俺達がしようとしてる事は前哨戦をクリアしないと出来ないことだ」
「前哨戦」
「そう。すでにスタートしてる」
「!!」
一陣の風がグランドを駆けていく。
別になんてことないはずだった。
でも。
グランド中央に来たとき。
その風が渦を巻いて。
その大きさを増していく。
周りにあるものを巻き上げる。
いきなりの出来事に、まだグランドにいた者達が息を呑んだ。
ただのつむじ風と思われたそれが大きく育っていく。
ありえない現象だった。
積乱雲をともなっていないのに、その風速は竜巻に匹敵した。
このままではグランドにいる人間は危険だし、何より移動を始められたら……。
「ジン!」
慎吾が手摺から身を乗り出して叫んだ。
口から出た名前が、今グランドで立ち尽くしている少年の名前だと解る。
このままでは!!
「さて、前哨戦スタート。まずが風からかな?」
「何言って!」
「結界を張る」
ヤマチャンが左腕を前に突き出す。
すると紫色の欠片が煌めき、その手に羊の角が握られていた。
「それって、豊穣の角『 コルヌコピア 』だ」
慎吾が唖然とヤマチャンを見る。
「まぁ借り物だけどね~。人間の俺では力限られてるからね」
意識を集中して、ヤマチャンが角を両手で持つ。
「慎吾。俺は結界張るだけで精一杯だ。あれをやれるのはお前だけだ」
「あ、あぁ」
竜巻の中にさっきから何かを感じ取ってはいた。
そう、あの中に怪物がいる。
「我が葡萄の導きによりて、この地に結界の円錐を!!」
角の広がった部分から紫の光が漏れる。
そしてそれが四方に飛び散り、天にも光を走らせる。
薄い紫の幕のような光が学校全体を包み込む。
「どうやらもう一体構内で現れるようだ」
「準太!?」
「お前はまず、あっちをやれ。少なくとも準太だって弱くはないだろ?」
「まぁねぇ」
「つか、マジやばくね?」
「あぁ!!」
「ただの人間はこの空間にはいないから」
「そりゃ暴れ放題でいいな」
「まあ壊れたものもこれで直せるしね」
便利べんりとヤマチャンが笑う。
では、心置きなく行きますか。
グランドを見下ろす。
「て!! ジンいるじゃん!?」
慎吾が声を荒げた。
ヤマチャンがきょとんとする。
「何言ってるの。この結界に残ってるって事は」
欠片持ちに決まってるじゃん!
その言葉を聞き終わる前に、慎吾は屋上から飛び降りていた。
「ひゅ~やるじゃん」
ヤマチャンは口笛を吹いて見送った。
「さすがに今の俺では気を張らないと、結界も厳しいんだよねぇ」
葡萄酒飲みてー!
終わったらこれで出せばいいかなぁ。
すでに御褒美の方に意識が向いているヤマチャンであった。
「ジーーーーン!!」
「え!? あ」
迅が竜巻の近くで蹲っている。
この風圧では動けないからだ。
その上なにか。
この竜巻が意志を持って、自分の側にいるような気がしてならなかったのだ。
「慎吾、さん?」
「大丈夫か?」
「ちょっと、足が」
飛んできた物に当たったらしく、少し腫れている。
「痛むか」
「大丈夫です、て!」
「無理するな。俺が運んで……」
《待て!!》
「「え?」」
風から声が聴こえた?
二人がゆっくりと竜巻を見上げる。
すると。
竜巻が弱まり、中から女の顔が覗いた。
「な、なんだよ、あれ!!」
迅が吃驚して慎吾に抱きつく。慎吾もそんな迅を護る様に抱きしめた。
「くそ。まさかこんな所に出てくるか」
《そいつはあたしの獲物だ。離れろ! 馬!!》
「馬言うな!! 失敬な奴だな」
慎吾が立ち上がりながら迅も一緒に立ち上がらせる。
そういえば。
さっきまで耳元でビュービューと音を立てていた風がおさまった?
迅が気がつく。
慎吾が来てからさっきまでの痛い風が、自分を覆っていない事に。
かわりに。
優しい風が自分らを包んでいる事に。
「これ」
クスクスクス。
お寝坊さん。
まだ思い出さないの?
透明な女の子がふるりと傍をよこぎった。
「……シルフ? あれ?」
迅がふと頭を振る。
何言ってるんだろう? オレ?
《それを置いて消えろ! ペガサス》
「ふざけた事ぬかしてんじゃねーぞ! ハーピー!!!」
「ハーピー?」
確かなんか神話で読んだ事ある。迅が記憶を弄る。
「風のお化け鳥!!」
「お! うまいこと言うね」
慎吾がにやっと笑った。
《言わせておけば、この~~~~》
怒ったハーピーがその姿を完全に現す。
女の顔に胸元まで人間だが、その腕は鳥の羽であり、胴も、足も鳥だ。
足には大きな鍵詰めがついてる。
あれでやられたらひとたまりもないだろう。
「まぁお莫迦さんは頭に血を上らせてくれた方が、扱いやすいからな」
慎吾がさてっと、迅を見つめた。
「どうやら、ジンも俺の仲間らしいよ?」
「?」
「実際あんな化け物見て、動揺あんまりしてないようだし」
ハーピーがばっと羽を広げる。
そしてそれを慎吾達目掛けて羽ばたかせる!
すると無数の羽が慎吾達に目掛けて飛び掛ってくる!!
だが、迅を抱えた慎吾は軽々とそれを避けてあとずさる。
スタタン!!
今さっき慎吾達がいた場所に突き刺さる羽根。
迅が気づく。
慎吾の背中に白い羽が生えていることに。
「慎吾さん、羽」
「あーやっぱ出した方が動き早くなるし。シルフの使役必要なくなるしね」
「はぁ」
そんな言葉で納得してるって、オレ、変だよ?
迅が慎吾につかまりながら考える。
何度もハーピーが羽で攻撃してくる。
それを間髪、避けていく慎吾。
だが両手に迅を抱えていては、いづれ奴につかまってしまうだろう。
「やっぱ本体に戻る」
「?」
「乗っかれよ、ジン」
「え、え!!」
迅が驚いている間に。
慎吾がハーピーからかなり距離を取ってから、その身を光らせてペガサスとしての姿を現した。
「早く背中に乗れ」
「あ、はい!」
馬になんて乗ったことないのに!
でも迅はすんなりと慎吾の背中に乗る。シルフが下から手を貸してくれたのだ。
「ありがとう、シルフ」
「なんだ。ジンこいつら見えてるの?」
「あ、はい。さっきから何となく」
「そいつはすごい。って、飛ぶぞ!!」
ぎゅっと迅が振り落とされないように慎吾のタテガミを手で掴む。
「痛かったらごめんなさい!」
「大丈夫。いくぞ!!!」
慎吾が大きな翼を羽ばたかせた。
「うわうわうわぁ!」
迅が眼下に学校校舎やグランドを見下ろして、感嘆の声をだす。
「さぁて、空中戦と行きますか!!!」
「って、どうやって、倒すんです?」
「……どうしようか?」
一瞬白けた空気が周りを包む……。
「だからいつも詰めが甘い!!って言うんですよ!!!」
迅が絶叫した。
微かに迅の中で何かが目覚めようとしていた……。
2008.01.23
しゅりんか
あとがき
すみません。こっちの話のがちょっと書きやすくって。
でも展開が早いでしょう? ぱっぱ、ちゃっちゃとこれは終わらす予定ですので。
終わらせたい、なぁ(シクシク)。
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